北村薫『ひとがた流し』☆☆☆☆

 しみじみといい話でした。40代なかばの、学生時代からの友達である女性3人の友情物語。アナウンサーの仕事をしている千波を中心に、その友人2人との交流や、周辺の人々のあれこれを描いている。章ごとに、語り手がチェンジしていく形式。

 北村さんならではの、細やかな心理描写がさすが。ホントに著者は男性なのか?と思うほど。繊細な女性心理をよくぞここまで。千波が結婚にいたるまでがとんとん拍子にうまくいきすぎ、ということだけがひっかかるが、でも救われるこの結末に至るにはやむをえずか。

 彼女たちが、学生時代の思い出を語る場面。あの時にああいうことがあったよね、と思い出を共有できる友がそばにいるというのは、なんとも幸福なことだとしみじみ思った。そして永遠にいなくなっても、ふとしたときに彼女のことを思い出すとき、友は胸の中に帰ってくる。

 決して派手な話ではないけれど、なんてことない平凡な日々における人と人との温かな心のゆきかいを描いた、やさしい物語でした。☆4つ。ひとがた流し