北國浩二『夏の魔法』☆☆☆1/2

 ん~、さくさく読めて面白いけど、感想としてはわりと普通。

 しかしこの設定はあまりに残酷。22歳の老婆。14歳で早老症にかかり、しかも末期がん。その病気を知られたくなくて当時大好きだった彼と別れる。その思いを胸に最後の思い出にと、彼と過ごした懐かしい島を訪れた彼女の前に、成長してたくましい青年になった彼が現れる…。

 彼女じゃなくても、「こんなことして何が楽しいの、神様?」とつぶやきたくなる。切ないなんてもんじゃない、あまりにもつらすぎる。彼女の苦しさ、もどかしさ、やりきれなさ、そして諦観。それらが読者の胸をえぐる。しかも彼女の前には、彼に恋してるらしい、とても魅力的な若い女性が。

 途中までは普通の恋愛小説。それが後半、突然ミステリに変貌するのがちょっと唐突な気がした。主人公の行動や心情に「ああ、そっちにいかないで、いかないで」と祈るような気持ちで読んでいたが…。

 恋愛小説部分はかなりいいんですが、ミステリ的には定石どおり、という印象。むしろ恋愛小説に徹したほうがよかったのかも、ってそれじゃ〈ミステリ・フロンティア〉にならないか。☆3つ半。
夏の魔法